
小学生の頃は、毎年8月20日になるとイヤな感じがした。誕生日だからといって、
誰かがケーキを買って祝ってくれる訳でもない。何より、夏休みがあと10日しかない、
という区切りのいい事実に暗たんとなった。当然のことに、宿題だって残っている。
そんな微妙な感覚を63歳になったいまでも覚えていることを「レミニセンス効果」と
呼ぶそうだ。記憶は時間がたつほど薄れるが、条件によっては時間がたった方が
記憶が鮮明で思い出しやすくなる、という現象。15〜20歳の記憶が鮮明らしい。
年をとると時間の経過が速く感じられるのは、言うまでも無い。フランスの心理学者
ピエール・ジャネの唱えた「ジャネの法則」は、「心理的な時間の長さは、年齢の
逆数に比例する」というもの。10歳の時の1年は、6倍の60歳では6分の1の
2ヵ月にしか感じられないというのだから、まるで急な坂を転げ落ちるようなもの。
日経の日曜版のコラムは、「刺激のある生活を送る。これが老いを食い止める
カギ」と結ぶが。そんなにジタバタしなくたって、ペルペトゥール・モビーレ
(物理の永久運動、宗教の輪廻転生、生物の食物連鎖)にこの身を任せて、
何があっても「是」のひと言。「是」は、「日こそ正しい」ではなく、匙と柄らしい。
老いて箸も使えずスプーンになっても、是、イエスと、肯定肯定絶対肯定なのだ。